DTCに関するFAQ集

製薬企業がDTCを導入し実施する際には様々な疑問が出てきます。当社の永年の経験からそれらの疑問に対する実践的な回答をFAQ集として用意しました。
日本の製薬業界にDTCマーケティングが導入されて20年以上が経ちました。初期の段階からこれに取り組んできた企業にはかなりのノウハウが蓄積された一方、まだ取り組んでいない企業、過去に取り組んだが失敗してその後見合わせている企業など置かれている状況によりさまざまなタイプの疑問があるのが実情です。当社では2008年に設立してから10年以上日本の製薬企業のみなさまに数多くのDTC実施の支援をして参りました。この経験をもとによくある質問にお答えするFAQ集をご用意しました。さらに詳しくお聞きになりたい場合は遠慮なく直接お問い合わせください。

初めてDTCに取り組みます。社内に経験者がいなくて不安なのですが?

社内にDTC実施に関する経験者がいない場合、取り組むことがすべて初めての経験となるため大変な時間と労力が必要となります。はじめてDTCに取り組む際にはほぼ1年間の準備期間が必要となります。経験のある人材をリクルートしたり、外部業者にヒアリングをしたりすることが多いようです。人材の採用は時間がかかりますし、DTCの計画と実施を1回くらい経験しただけでは歯が立たないことが多いです。外部業者からは実施プランの具体的な情報が得られる可能性がありますが、業者自身にとってメリットのある手法しか提供しないこともあり、中立的な情報とは言えないです。 DTCの計画と実施の際は、遠回りのようでも社内組織間の整理や関係者の知識向上から始めるべきでしょう。そしてプロダクトマーケティングの戦略を踏まえたうえで、その対象疾患領域や患者さんの分析も必要です。時間とノウハウを買い、中立的なアドバイスを受けるためには専門コンサルタントの起用が一番の方法と考えます。

以前、当社でもDTCを実施しました。結果が思わしくなく、その後DTCを計画することが社内的に難しくなっていますが、どうしたらよいでしょうか?

DTC を実施したが結果が思わしくなかった、あるいは効果がよく分からなかった、というケースはよく耳にします。このようなケースの場合は、まず以前実施したDTCの分析をして失敗の原因を明らかにすることです。原因が分からないと対策や改善もできません。次のDTCの計画を社内で提案する際も必ず以前の失敗原因は確認されるはずです。原因究明は社内だけで進めるには限界があります。外部の第三者の専門家に客観的に分析をしてもらい失敗原因と今後の対策をアドバイスしてもらうのがよいと考えます。

知人の会社でDTCを実施した際に、委託する会社の選定がうまくなく、結局失敗したと聞きました。DTCを実施する際に委託する会社はどうやって選べばよいのでしょうか?

DTC を実施する際に業務委託をする会社(多くの場合は総合広告代理店であることが多い)を選択することはその成功に大きく影響します。購買部門がかなりしっかりとした企業でも DTC 実施に関するノウハウがないと選定がうまくいかないことがあります。現在、 DTC の実施では成功しているとみられている企業でも最初のうちは委託会社の選定に失敗した経験を持っていたりします。その失敗を踏まえて正しい選定ができるようになったということです。それでは、あまり DTC の実施経験がない企業が正しい選択をするにはどうすればよいのでしょうか。まずは社内で DTC の戦略フレームワークをきちんと構築することです。これがきちんとできていれば委託すべき会社がどのような業種であるかが見えてきます。また DTC コミュニケーションの目的も重要です。目的を達成するためのパートナーとなる企業はどういうところなのかという視点も必要です。そのうえで、複数の候補会社を選定し、緻密なブリーフィングを実施した後、選定する方法をお勧めします。候補選定がいい加減であったり、情報のインプットが杜撰であるとアプトプットの精度も低くなり DTC の実施段階では大きなブレが出てきて、結局失敗に至ることも多いです。

当社では何回かDTCの経験があります。基本的な方法論は分かっていますが上層部からのより高品質な実施を求められます。どうしたらよいでしょうか?

2 ~ 3 年あるいは 2 ~ 3 回の DTC の実施経験がある企業ではみなさま同様な課題をお持ちになっています。 DTC の基本的な方法論は同じと言っても疾患領域が違えば患者さんの年代や性別比、疾患に対するインサイトも全く別なものになります。市場における自社製品の位置づけも変わってくるでしょう。「分かっている」と思うことがすでに品質の向上を進める事を阻んでいると考えてください。同じ疾患領域で継続して実施する DTC の品質を高めるためには過去に実施した活動内容の更なる分析と課題抽出が必須となります。成功したと思っていても改善の余地が必ず出てきます。そのような分析作業は外部の第三者に客観的に行ってもらう方法が適しています。また、新しい疾患領域で DTC を検討する場合は、全く初めて取り組むときと同じ心構えで進めることが肝心です。

DTCの計画を社内申請する際に上層部から効果検証方法を求められます。DTC活動に関する効果検証をどう考えたらよいのでしょうか?

DTC を実施した場合の費用対効果については常に話題になることです。 DTC マーケティングは典型的な IMC (統合型マーケティングコミュニケーション)になりますから、 IMC の中の一部のコミュニケーション活動だけを取りだして費用対効果を計ろうとするのは厳密に言うと無理があります。 IMC ではさまざまなコミュニケーション活動が複雑に組み合わされて実施されるのが一般的です。 DTC 実施の際に考えなければいけないのは実施するひとつひとつの活動における結果数字を正しく把握することです。活動に対する結果数字が記録されていればそれを実施後に分析することが可能になります。当然ですが結果数字は実施前にその計測方法を用意周到に準備する必要があります。また、分析方法は一様ではありません。それぞれの DTC 活動ごとに方法論が異なってきます。この種の効果検証の実施に関してノウハウのある外部のコンサルタントなどに相談するのが一番よいでしょう。

当社ではDTCを推進するための社内体制が整っていません。理想的な社内体制とはどのようなものなのでしょうか?

DTC を実施するための社内体制は各社各様です。そのため理想的な社内体制はこれがよいというモデルはありません。内資系企業と外資系企業でも違いがあります。ただ間違いなく言えることは、社内の複数の部署が実施に関連してくることです。そのため準備段階から関連する部署と連絡を密にとって計画を進める必要があります。また、初めて DTC を実施する際は関連する部署によって DTC に対する認識が違っていて推進に時間がかかることがよくあります。計画を進める前段階で認識合わせなども必要になってきます。多くの企業の DTC 推進体制をサポートした外部のコンサルタントに相談すると自社に相応しい体制が見えてくると思います。

販売情報提供活動GLが施行されましたが、その中に「疾患啓発活動」が記載されています。どのようなことに注意したらよいのでしょうか?

2019年4月に販売情報提供活動GLが施行され各社がその対応に追われていると思います。その内容は主にMRやMSLなど製薬企業の社員が医療者に対して行う活動に関するものです。その中に「疾患啓発活動」の文言が含まれていたことにより、さまざまな憶測が飛び交い、当初情報が錯綜した感があります。まずは当局から発出されたGL全文とその後発出されたQ&Aをよく読むことが大事です。そうすれば何をしてはいけないのか、しても構わないかは見えてきます。業界内にまことしやかに流れている根拠のない解説に惑わされることのないようにしましょう。社内の専門家に確認してもよく分からない場合は、外部のこの種の情報に精通している専門家に意見を求めてみるのもよいでしょう。

DTCを計画する際の患者さんのリサーチで困っています。どのようなリサーチが理想的なのでしょうか?

DTCを実施する際にそのコミュニケーションの対象となる患者さんのリサーチは必須となります。多くの製薬企業ではプロダクトマーケティングの戦略立案のためにも患者リサーチを実施しています。しかし、 DTCに際して実施するリサーチは別のものと考えた方がよいでしょう。すでに患者リサーチ結果があるから、それを流用すれば事が足りるほど単純ではありません。消費財マーケティングでの消費者インサイトを探るリサーチと同じくらい深掘りをしたリサーチが必要となります。まず調査でどのような事を知りたいかを整理するとともに患者インサイトをきちんと探る力のある調査会社も選定する必要があります。この種の患者リサーチの実施や調査会社の選定に関してノウハウのある外部のコンサルタントなどに相談するのがよいでしょう。

DTCを実施している他の製薬企業と情報交換をしたいのですが、製薬協など業界団体にはそういう場はないようです。何か方法はないのでしょうか?

A製薬協には患者団体との連携に関する委員会はありますが、DTC(疾患啓発)にフォーカスした組織はないようです。業界団体ではないですが、製薬業界の研究会として疾患啓発(DTC)研究会という団体があります。2011年に創立され、長年にわたる活動実績を持ち、参加社45社という業界で唯一のDTCに関する研究団体です。この研究会に入会するには審査がありますが、研究開発型の製薬企業であれば入会はさほど難しくないようです。直接お問い合わせをしてみてください。(以下がこの研究会のURLになります)
http://www.dtc-kenkyukai.com/index.html