DTC基礎知識
第1回:タイアップとは
今号より毎号連続でDTCに関する基本的な知識を分かりやすくまとめてお伝えしていきたい。今回は、1月6日に製薬協コード委員会からの通知「テレビや新聞等のメディアを利用した情報発信活動、いわゆる疾患啓発広告とタイアップ記事(広告)について」に出てくる【タイアップ】という言葉について解説したい。
今号より毎号連続でDTCに関する基本的な知識を分かりやすくまとめてお伝えしていきたい。今回は、1月6日に製薬協コード委員会からの通知「テレビや新聞等のメディアを利用した情報発信活動、いわゆる疾患啓発広告とタイアップ記事(広告)について」に出てくる【タイアップ】という言葉について解説したい。
DTC活動をしている企業では、よく広告代理店からこの言葉を聞くことがあるのではないだろうか?具体的には、「この○○疾患について■■雑誌の10月号で丁度特集があり、編集部にかけあったところタイアップ記事で2頁取り上げてもらえることになりました。」というような感じだ。
タイアップの意味をよく知らない企業は、「なるほど、雑誌で2頁も記事として取り上げてもらえるのはタイミングがよい。うちでいろいろお願いしているKOLの古川先生に取材してもらいうちの薬に有利なコメントをしてもらえれば、こんないいことはないな!」となるのだが、これは製薬協からの通知が出る以前からかなり黒に近いグレーなことだった。
似たような手法に【記事体広告】というものがある。これは、医師向けの専門雑誌などでも各社さかんに実施しているので、よく理解できるだろう。企業が料金を払って雑誌などの広告頁を押さえ、そこに編集記事によく似た広告を掲載することである。雑誌の編集部は一切かかわらずあくまでも広告であるので、はっきりとわかるようにその頁の目立つところに広告主の社名を載せる必要がある。(これをクレジットと呼ぶ)
【タイアップ】というと編集記事として広告頁ではなく編集頁に書いてもらうので、問題がなさそうに見えるが、これが大間違い。お金を払って雑誌などのメディアに、当該企業の意向に添った内容の記事(もどき)を書いてもらい掲載するのは、もうこれは純粋な編集記事とは言いがたい。事をやっかいにしているのは、これを勧める広告代理店の多くが、タイアップは広告ではないなどと説明するから製薬企業には訳がわからなくなるのだ。企業が本来の広報活動を行ったことにより雑誌や新聞などのメディアに純粋な記事が掲載される場合、そこにメディアとの金銭授受は一切発生しないのだ。
消費財では、タイアップ記事を載せても事実と著しく乖離した余程ひどい内容でなければ問題になることはないだろうが、薬事法(薬機法)などで一般消費者への広告を制限している医療用医薬品では、間違いなく問題である。
にもかかわらず、DTC活動のなかで一部の企業によるこれらの行為が散見されたので今回の通知でも注意が出されたものだろう。
(まとめ)
- タイアップ記事は、お金を払って記事(もどき)を書いてもらう行為なので、広報活動による紙媒体記事の掲載とは全く異なる。
- タイアップは広告ではないという広告代理店からの説明は、医療用医薬品では通用しない。
- タイアップという言葉を聞いたら、記事という単語がついていてもそれは、広告に近いと認識すべき。
解説:古川隆
実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。
医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。
文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。
2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。