DTC基礎知識

第2回:DTCの語源

製薬業界で今やDTCという言葉を聞いたことがない人はいないだろう。ではその語源はどこから来ているのだろうか。
世界で一番活発にDTCを行っている米国だが、1970年代には全くDTCは行われていなかった。それが、ある調査の結果から医師の処方行動が患者の意向によって変わることがわかり、製薬企業は直接患者に対してコミュニケーションをしていくことになった。

製薬業界で今やDTCという言葉を聞いたことがない人はいないだろう。ではその語源はどこから来ているのだろうか。

世界で一番活発にDTCを行っている米国だが、1970年代には全くDTCは行われていなかった。それが、ある調査の結果から医師の処方行動が患者の意向によって変わることがわかり、製薬企業は直接患者に対してコミュニケーションをしていくことになった。

 
DTCの語源はこの直接患者(消費者)に対してコミュニケーションしていくところから来ている。DTCとはDirect to Consumerの略である。最初にDTC広告を行ったのはMSDであり、1981年に肺炎球菌ワクチンの広告を雑誌に掲載し、翌1982年には他の製薬企業も相次いでDTC広告を新聞や雑誌に掲載するようになった。
 
米国ではDTCというとDTC広告を限定して指すことが多い。日本ではDTCマーケティングと呼ばれているが、これは本邦で最初にDTCについて著書を著した古川の書名が「DTCマーケティング」であったことが大きく影響している。米国では同じ使い方でDTCコミュニケーションと呼んでいるようである。古川の定義でもマーケティング・コミュニケーション活動となっているので同義とみてよいだろう。
 
米国と日本では法規制の違いもあり、行政当局の立場は「日本にDTCは存在しない」ということである。当局が認識するDTCとは医療用医薬品の製品名を直接消費者に宣伝することであり、これが規制されている日本では確かにDTCは存在しないことになるだろう。では、現在盛んに行われている日本のDTCは何なんだろう。これは当局の指導があったのかどうかは不明だが、「疾患啓発活動」あるいは「疾患啓発広告」という言葉を使うことになっているようだ。製薬業界誌紙もある時期から一斉にDTCという言葉を使わずに「疾患啓発」という言葉を使うようになった。
 
しかし、DTCでは、疾患の啓発活動だけではなく、患者の受診促進や確定診断された後の服薬継続や通院実行担保も含まれるので、DTC=疾患啓発とするのはいささか無理が生じているような気がする。もっとも実施する製薬企業では、日本でもDTCという言葉を普通に使っているので目くじらを立てることもないだろう。
 
最後にDTCの定義について、2005年3月に発行された古川の著書から改めて紹介しておこう。
 
「DTCマーケティングとは、製薬企業が自社の医療用医薬品に関連する特定の疾患に焦点を当て、結果として自社製品の処方に結びつけるために医療消費者への疾患啓発から潜在患者の発掘、受診の促進、そして受診後の疾病管理、患者の生活指導、継続的治療を促すための中長期的かつ計画的に実施する総合的なマーケティング・コミュニケーション活動である。」

この定義ができてから10年以上が経っている。