DTCマーケティングとは
第2回:医薬品マーケティングとDTCマーケティング
今まで経験のない消費者とのコミュニケーション、それはB to Cのプル戦略を製薬企業も実施せざるを得なくなったことを意味する。製造企業が大きくなるにつれて流通チャネルに対するプッシュ戦略と消費者に対するプル戦略を同時に用いることになるのはよく知られている。
今まで経験のない消費者とのコミュニケーション、それはB to Cのプル戦略を製薬企業も実施せざるを得なくなったことを意味する。
製造企業が大きくなるにつれて流通チャネルに対するプッシュ戦略と消費者に対するプル戦略を同時に用いることになるのはよく知られている。
このプッシュ戦略とプル戦略の両方が必要となることがIMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)を考える上で重要になる(IMCについては次回で細かく触れる)。
DTCマーケティングは紛れもないコンシューマー・マーケティングであり、製薬企業の実施するプル戦略である。少し前まで、製薬企業ではDTCマーケティングは特殊なマーケティング手法と考えられていたようだ。そのため、DTCマーケティングだけが単発のキャンペーンとして単体で検討され、計画され、実施され、結果として何の効果があったのかという議論が繰り返されてきた。 しかし、同じ企業が実施するマーケティングで医師向けのマーケティング、そして消費者のマーケティングと区別して考えること自体おかしなことである。製薬企業では未だに顧客は医師だけと考えている節があるが、本当の顧客は医薬品を服用する患者であろう。そうするとクリニックや病院などの医療機関は流通チャネルにおける小売店に相当すると考えるのが自然だ。大企業である製薬企業は、流通チャネルである販売代理店や医療機関に対して従来のプッシュ戦略を実施するのと同時に最終消費者である患者に対してプル戦略といえるDTCマーケティングを実施すると考えると分かりやすいのではないだろうか(図表2参照)。 DTCマーケティングの先進企業では、このプッシュ戦略とプル戦略のマーケティング統合が実に見事になされている。もはやDTCマーケティングだけを取り出して論議することはあまり意味のないことだろう。統合的なマーケティング活動の中に従来の医師向けのマーケティング戦略とDTCマーケティング戦略の両方があると考えるのが自然である。
解説:古川隆
実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。
医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。
文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。
2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。