DTCマーケティングとは
第3回:IMCとは何か
製薬企業を対象としたセミナーなどで以前よく「IMCという言葉をご存じの方はいらっしゃいますか?」と質問をした。各回の参加者から「知ってます」という回答を聞いたことがない。これが、広告会社関係者の集まりだと、ほとんどの人が知っている。逆に「そんな当たり前な質問をしないでください」と怒られかねない。
製薬企業を対象としたセミナーなどで以前よく「IMCという言葉をご存じの方はいらっしゃいますか?」と質問をした。各回の参加者から「知ってます」という回答を聞いたことがない。これが、広告会社関係者の集まりだと、ほとんどの人が知っている。逆に「そんな当たり前な質問をしないでください」と怒られかねない。
IMCとは統合型マーケティング・コミュニケーション(Integrated Marketing Communication)の略号である。マーケティング・コミュニケーションについては、マーケティングの4Pのうちのプロモーションの概念が変化したものであると第1回目で述べた。第2回目では製造企業が大きくなるにつれて流通チャネルに対するプッシュ戦略と消費者に対するプル戦略の両方の戦略が必要となることがIMCを考える上で重要であるとも述べた。
IMCの定義は「広告、ダイレクト・マーケティング、SP(セールス・プロモーション)、PR(パブリック・リレーションズ)といったあらゆるコミュニケーション手法の戦略的な役割を生かして組み立てられた包括的コミュニケーション計画の付加価値を認め、かつこれらの手法を合体することにより、明晰で一貫性があり、最大効果を生むコミュニケーションを創造すること」とされている。(全米広告業協会:有賀勝訳、図表3参照) もともとIMCは米国で1980年代に出てきたコミュニケーション手法である。研究者の理論によるものではなく、広告主や広告会社などの実務家により実践の場で急速に普及した手法である。現在日本でもおよそ消費財企業でIMCを知らない会社はないだろう。米国でこのIMCが普及した背景には、部分最適の行き過ぎへの反省があったからである。 広告は広告戦略、PRはPR戦略、SPはSP戦略、とそれぞれの担当部門が専門スタッフと専門会社によりその最高の戦略を求めていった結果は、必ずしも企業としてのマーケティング・コミュニケーション戦略の最適ではないということが分かったからである。日本では、広告会社の守備範囲が異なるので、米国ほど部分最適の弊害は出なかったが、IMCが普及する以前に望ましい形の統合がなされていたとも言えない。 現在ではクロス・メディア戦略ということが声高に叫ばれているが、ベースとなっているのはこのIMCの考え方である。 さて、それではこのIMCがどうしてDTCマーケティングと関係あるのかということについては次号で触れてみたい。
解説:古川隆
実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。
医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。
文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。
2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。