DTCマーケティングとは
第8回:DTCマーケティングとMRの統合
日本でも初期の段階のDTCマーケティングでは、MR活動との効果的な統合が計画されておらず失敗した事例があったようだ。米国でも初期の段階では同様であったようだが、現在はしっかりと統合されて実施されている。
日本でも初期の段階のDTCマーケティングでは、MR活動との効果的な統合が計画されておらず失敗した事例があったようだ。米国でも初期の段階では同様であったようだが、現在はしっかりと統合されて実施されている。
4回目で詳しく述べたがDTCはIMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)であるので、マーケティング・コミュニケーションのツールのすべてを統合することは自明のことである。日本では、この理解が進むとともにほとんどの製薬企業でDTCマーケティングを最大限利用したMR活動が展開されている。少なくともDTCマーケティングを実施した経験のある企業から、MRをどうやって関連させるのかと言った初歩的な質問が著者のところに寄せられることはない。図表8にその汎用例を示した。疾患領域や製品特性、各社のMR戦略の違いにより細部は違ってくるかもしれないが、だいたいにおいてこのような統合が図られていると思う。
DTCの実行プラン立案までの段階では、現場での調査に協力してもらったり、情報を提供してもらうことによりDTCマーケティングの企画に少しでも参画してもらう。DTCマーケティングの実行プランが決定されてから実施に移されるまでの間には医療機関に対してDTCに関する情報提供を徹底的にしてもらう。この活動が非常に重要で、DTCマーケティングに製品名を使用することができない日本では、この事前のMR活動によってドクターにどこの企業が患者を医療機関に来院させているのかを認識してもらう必要がある。当然認識の後、自社製品の処方へと誘導するのはMRの本来の仕事である。 DTCマーケティングの実施中は、現場においてフォローにつとめてもらう。どんなに事前に情報提供をしておいても実施中に何らかのクレームが発生することがある。そういう場合は直ちに本社に連絡してもらい最善の対応をすることになる。特にクレームがなくても実施中は、患者の受診動向をヒアリングするという名目で訪問することが可能なので、積極的に訪問してもらいその情報を逐一本社に報告してもらうのも手である。DTCマーケティングの終了後も来院患者数のヒアリングや何か問題点がなかったかなどの確認にも動いてもらうことができる。 DTCマーケティングとMR活動との統合を解説してきたが、DTCマーケティングはMRにとっても格好の活動チャンスとなるので、どれだけ効果的に活動してもらうかで成果も大きく違ってくる。本社の製品チームはDTCマーケティング実施に当たってMRのモチベーションアップを図ることも忘れてはならない。
解説:古川隆
実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。
医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。
文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。
2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。