DTCマーケティングとは

第4回:IMCとDTCマーケティング

実際にIMCを計画立案し、推進していくためにはいくつかの有効条件を考慮する必要がある。
IMCの研究者であるPercyはこれを9つに整理している。

実際にIMCを計画立案し、推進していくためにはいくつかの有効条件を考慮する必要がある。

IMCの研究者であるPercyはこれを9つに整理している。
①ターゲット・オーディエンスの複雑性
②流通の複雑性
③消費者がたどる商品購入意思決定プロセスの複雑性
④短期的コミュニケーション目標対長期的コミュニケーション目標
⑤市場セグメント明確化の必要性
⑥複数のそれぞれ異なるメッセージを伝達する必要性
⑦特徴的なそれぞれ異なるメッセージを伝達する必要性
⑧流通業者向けインセンティブの利用の可能性
⑨小売店向けメッセージの重要度の度合い

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また、日本の著名な広告研究者である岸=田中=嶋村はこの条件を4つにまとめている。
①ターゲット・オーディエンスの複雑性
②製品・サービスの複雑性
③流通チャネルの複雑性
④コミュニケーション目標の複雑性 この4つの有効条件を用いてIMCとDTCマーケティングを対比してみると両者の関係がよく分かる。(図表4参照)①ターゲット・オーディエンスの複雑性では、プッシュ戦略におけるターゲットである医療従事者とプル戦略におけるターゲットである医療消費者の存在がある。②製品・サービスの複雑性では、医薬品は人体内で薬の持つ複雑な作用機序によって作用し、すべての人で微妙に作用が違うため、医師や薬剤師による詳しい説明が必要になる。③流通チャネルの複雑性では、医療機関を流通チャネルとみた場合、医師は処方権という強力な権限により医薬品の一方的な購買決定をせまることができる。④コミュニケーション目標の複雑性では、DTCでは潜在患者の発掘と速やかな受診促進を目標とするとともに確定診断された後では、定期的な通院や良好な服薬コンプライアンスの維持も目標となる。 以上にようにDTCマーケティングはIMCの有効条件をすべて満たすことから、その計画立案や推進にあたっては、IMCの理論枠組みによるマーケティング・コミュニケーション戦略を採用する必要があると言えよう。

解説:古川隆

古川隆:オーストリア大使館大使公邸でのパーティにて、元衆議院議員総務庁長官の高鳥修先生と。
古川隆:オーストリア大使館大使公邸でのパーティにて、元衆議院議員総務庁長官の高鳥修先生と。

実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。

医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。

文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。

2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。