DTCマーケティングとは

第7回:DTCマーケティング推進のための社内組織

いよいよDTCマーケティングを推進するための社内組織について解説していこう。日本にある製薬企業でDTCマーケティングを推進するための専門部署を持っているのはほんの数社ではないだろうか。一番多いケースが、本社のマーケティング関連部署にDTCマーケティングの担当者を置くケースである。一人でも専任の担当者が居ればいい方で、著者の知る多くの企業では兼任の担当者であることが多い。DTCマーケティング以外の業務もこなしながらDTCマーケティングも見ていく形である。これは外部から見ていても気の毒なくらい本人が多忙であることが多い。日本でもDTCマーケティングがこれだけ普及してきたのだから、もっと専任の担当者も増やして一つの部署として機能させて欲しいとは思っている。

いよいよDTCマーケティングを推進するための社内組織について解説していこう。

日本にある製薬企業でDTCマーケティングを推進するための専門部署を持っているのはほんの数社ではないだろうか。一番多いケースが、本社のマーケティング関連部署にDTCマーケティングの担当者を置くケースである。一人でも専任の担当者が居ればいい方で、著者の知る多くの企業では兼任の担当者であることが多い。DTCマーケティング以外の業務もこなしながらDTCマーケティングも見ていく形である。これは外部から見ていても気の毒なくらい本人が多忙であることが多い。日本でもDTCマーケティングがこれだけ普及してきたのだから、もっと専任の担当者も増やして一つの部署として機能させて欲しいとは思っている。

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さて、社内である製品のDTCマーケティングを実施しようとした場合どんな順序で進めていったら良いかについて組織的な観点から汎用的な考えを提示しよう。各社それぞれの組織、社内手順があるので、ここで提示するのはあくまでも参考例としてみてほしい(図表7参照)。 第1段階として「情報整理」のフェーズがある。専門の部署がない場合は、製品担当チームが核となって始動する。DTCマーケティング実施のために必要な疾患情報、市場情報、患者情報などを整理する。この段階でとかく手薄になるのが患者に関する情報である。社内に信頼に足るデータがなければ迷わずオリジナルの調査を設計し実施してでもデータを揃えることが肝要である。 第2段階としては「プランニング」のフェーズがある。ここでは、社内承認を得るための戦略的な観点からのフレームワークを徹底的に検討する。この段階では、社内の製品チームを支援する部署や著者のような専門コンサルタントも参加することが多い。組織としてあまり人数を多くしないことも大切である。ここでよく犯す失敗は広告会社などのDTCの協力会社に安易にDTCの企画依頼することである。協力会社は製薬企業のために戦略のフレームワークは作成してくれない。あくまでもコミュニケーション部分での具体的な企画提案になる。戦略は社内とコンサルタントで作成すべきであろう。 めでたく社内での承認が得られると第3段階である「実行プラン作成」のフェーズに移る。この段階では社内の関係する部署はすべて巻き込んでおかないと実行時にいろんな不都合が起きてくる。ここではじめて協力会社にきちんとブリーフィングをして実行プランの原案を作成してもらうことになる。このブリーフィングは重要で、第1段階で整理した情報と第2段階で決定した戦略そして実行予算を可能な限り詳細に提示してクオリティの高いプランを作成してもらわないといけない。著者の支援している製薬企業ではかなり緻密なブリーフィングシートを使用して実効をあげている。 実行プランが完成したら、あとは実施するのみであるが、多くの企業でDTCマーケティングの効果検証を実施している。効果検証はどのようなデータをもってするのか実施前に検討して、データの集め方(多くの場合は調査をすることになるが)を決定しておくことが必要である。DTCマーケティングの一連の活動が終わった後では得られるデータは限られてくる。そういう意味では、第3段階では、社内の調査部門の参加も必要と言えよう。

解説:古川隆

古川隆:ウィーンの8区Josefstadtの欧州事務所にて、トラム2番の電停のすぐ近くの建物内。
古川隆:ウィーンの8区Josefstadtの欧州事務所にて、トラム2番の電停のすぐ近くの建物内。

実業家、広告学者、広報学者。1958年5月20日生まれで、株式会社アーベーツェー(ABC)の代表取締役を務める。また、東洋大学理工学部都市環境デザイン学科講師や、埼玉医科大学の臨床研究審査委員会委員なども兼任している。

医療用医薬品のマーケティングに30年以上関わり、特に「DTCマーケティング(Direct to Consumer)」の分野で多くの研究発表を行っている。また、DTCマーケティングに関する専門書も執筆しており、日本におけるこの分野の第一人者。

文芸活動ではクラリネットの演奏者でクラシック音楽全般への造詣は深い。
ダンスの分野では2019年は1869年(明治2年)に日本とオーストリア・ハンガリー二重君主国の間で結ばれた日墺修好通商航海条約からちょうど150周年を迎える年、それを記念し祝賀するために11月に開催された「日墺友好150周年記念舞踏会」の開催に参画し、実行委員を務め舞踏会を成功に導いた。

2023年11月にウィーンで開催されている舞踏会を日本にも普及させることを目的に「Wiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)運営機構」を有志とともに設立、代表理事に就任した。2024年7月21日にワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の生誕200周年のプレ行事であるWiener Blut Ball (ウィーン気質舞踏会)2024を開催した。